店長が早くも交代し、俺にとって今日はその一日目だった。だがその新店長の姿はなく、結局今日はその次にその店を取り仕切っているベテランのバイトの人と残る二人で店を切り盛りした。店長がどんな人なのかすごく気になった。ベテランの人いわく「前の店長と感じは一緒だよ。全然気難しい人じゃない」といってたが。(前の店長はすごく気さくで若者オーラの出ているすごく接しやすい人だった。)

話がとぶが、正直この交代はあまりうれしくなかった。まだ3回しか働いてない俺は、覚えるべき仕事の3分の1の過程も満たないで代わられたことになるわけだ。これはすごく気分が悪い。店長が良いか悪いかは実際にあってみればわかることなのでそこは若干の不安だけに留まっているが、教わっている途中っていうのだけは腑に落ちない。研修生に一通り教えてから交代するべきだと思うのだ。もちろん、社員の入れ替わりの激しいチェーン店なのでそこはある程度しかたのないものではある。だが、それならそれで1週間、いや、せいぜい2週間前にはそのことを教えてほしかった。それなら俺にも「じゃあ今のうちにたくさん入っておきます」といろいろ調整がつけられたわけだから。ただ、実は前の店長を責めることはできない。というのも、その店長自身も三日前に交代を本部からつげられたのだ。だからこの愚痴は本部に向けたものとしておく。


いきなりですか!


今日のバイトは今までで一番暇だった。だが、覚えることの多い日でもあった。教わっていたタメの人から近々やめると密かに告げられ「その前に君にほとんど覚えてもらわないとやめるにやめれない」という理由で徹底的に教え込まれたのだ。それで結果的には全オーダーの8割はこなしたと思う。まぁ、とはいっても数字のインパクトほどたいしたことはないが。さっきも言ったとおり暇だったわけで、オーダー自体が非常に少なかったのだ。今までの1回の覚える量が1だったとしたら今回は1.5くらいだろう。

具体的に言うと、今つとめるキッチンには揚げ場、焼き場、刺し場、厨房という4つの役割があり、俺はまず過去の3回でその揚げ場をほぼこなすことが出来るようになった。それで今回も揚げ場がメインでそれに焼き場のレシピを少し見て雰囲気をつかむ事が加わるだけだった、本来ならば。

しかし、実際はなんと揚げ場、焼き場、差し場、厨房をいきなり全部やらされたのだ。社員がいないのをいいことに、どんどん俺に教え込もうとしたわけだ。別に嫌だったわけではない。でも、そう来ましたかとはおもったw。今考えれば、オーダーが少なくて本当に良かったと思う。これが多かったら何もかが中途半端になってただろう。時間があり、一品一品をゆっくり教えてもらいながらだったのでキッチンの役割全部をこなせたのだ。今日は運が良かったのかもしれない。


慣れが最大の目標


バイトは終始こんな感じだったわけだが、雰囲気に若干違和感があった。店長がいなかったのが主な要因だ。バイトの人だけでやったのは初めてだった。そのおかげでベテランのいわば店長の代理人にあたる人と初めてまともに話せたので結果的には良かった。

それにしてもこのバイトは、結構気さくな人が多くてやりやすいなぁ、と今日改めてそう思った。まだ全従業員の3分の1くらいにしか会ってないから断言はできないのだが、シフト表を見る限りその3分の1の彼らがほとんど主力を務めているようなのでそう思っておいてもさほど問題はないだろう。またバイト自体に関しても時給は高いし、自分で決められるシフト制。いくらでも融通が利くのが良い。場所が遠いのが玉にキズだが、そのおかげで移動中に音楽を存分に楽しめるというプラス思考は俺の頭の中でなんの異議を唱えられることなくあり続けている。とりあえずは満足しているのだ。


慣れない日本のしきたり


ただ、不満がないわけではない。たとえば退勤事情が厄介なのだ。今回も前回もそうだったのだが、退勤は勤務時間を過ぎたとしても責任者の声なしでは出来ない。つまり帰るには、ひたすら「あがっても良いよ」という声を待ち続けなければならないのだ。仕事がひと段落ついたからといって帰れるわけではないのだ。これはおかしいだろう。

「それ、責任者が言うことだから」
これは俺が勤務時間が過ぎたことに気づき、あがってもいいか何気なくバイトの人に聞いたときに言われたことだ。正直、ぞっとした。聞くことさえ許されないらしい。別に帰ると言ってる訳ではなく、帰宅の了承を尋ねたいだけだ。だが、それさえご法度らしいのだ。これはいくらなんでも常軌を逸していないか。

いや、違う。それはむしろ俺のほうかもしれない。日本ではそういう変な気遣いが伝統的に行われてたりする。たとえば、多くの企業では「有給休暇とっていいですか」「帰ってもいいですか」なんていえる社員はあまりいないだろう(厳密には、社員は言わないのではなく言えないのだ。もっといえば会社がそうはいわせないのだ。)。それと同じだ。他に働いている人がいるのに、自分だけ休むのは迷惑だ、露骨に帰ると主張するのはデリカシーがないし失礼だ。そんな感じだろう。それが日本のしきたりであり、また美徳ともいわれているのだ。だが、俺はそんなしきたりが嫌いだ。こういうことが起こるたびにストレスがたまるのだ。
なぜ我慢しなければならないのだろう。俺は納得できない。

それでもアルバイトはまだいい。不満ならとっととやめればいいのだから。しかし、会社はそうはいかないだろう。組織のそれは非常に根深い。

まぁ、大げさに書きすぎたかもしれない。バイトのほうも実際許容できる範囲だ。それでもいいたかったのは自分は自分のために働いているということを改めて認識しておきたかったからかもしれない。ちなみにその後、やっぱり責任者に聞いてみた。「帰っていいよ」との返答。もう即答だった。そんなもんだろう。聞きたい事は極力聞くべきなのだ。